九州で多数の路線バスを運行する西日本鉄道が、福岡市の中心部に入る手前に乗り継ぎ拠点を設けて、都心に流入するバスの系統と台数を減らす大改編を行っています。
詳しくはこちら→ 産経新聞 2015年2月17日報道
西日本鉄道(西鉄)は、福岡最大の繁華街「天神」にターミナル・西鉄福岡(天神)駅を有していて、複数の鉄道路線を運行するほか、国内最多の路線バスを運行することでも知られています。
西鉄グループが保有しているバスは2,855台で、年間乗客数は2億6,845万人と、共に日本一の規模です。
乗降客が多い「天神」では、実に100路線を超えるバス路線が乗り入れていて、多数のバスによる「バス渋滞」も発生しています。
路線バスはいわゆる黒字事業ではなく、日本最大の西鉄グループでさえも平成25年度にはバス事業で1,800万円の営業赤字を計上しています。
特に郊外ではいわゆる赤字区間が多く、従来は減便によってコストを削減してきました。
地方では少子高齢化の深刻化に伴って人口減少が予想されています。
従来のように減便によってバス路線ネットワークを維持する方法を続けていけば、郊外での交通はますます不便になり、人口減少に拍車をかけることになってしまいます。
そこで西鉄では、郊外区間の減便で経費圧縮を図るのではなく、従来の常識だった「都心部への直通」をやめて、都心部を効率化することで得た余力を郊外に振り向けることで、バスネットワークを維持する方針に転換することにしました。
西鉄はまず、福岡都市圏の南部エリアと市中心部の天神を結ぶ路線を2013年11月に再編しました(http://www.nishitetsu.co.jp/release/2013/13_101.pdf)。
天神の南4.5kmにある「西鉄大橋駅前」を乗り継ぎ拠点に設定して、南部郊外エリアから中心部に直通していた路線の大半を「西鉄大橋駅前」までとして、都心方面には「西鉄大橋駅前」で別のバスに乗り継ぐ方式に変更しました。
「西鉄大橋駅前」~「天神」間は、朝のラッシュ時には4分間隔、通常8分間隔で運行するシャトルバスを運行して利便性を確保しています。
また、乗り換えることへの抵抗感を減少させるため、交通系ICカード「nimoca」による乗り継ぎ割引サービスに加えて、「西鉄大橋駅前」で1回乗り換えるごとに「乗り継ぎポイント」を100ポイントを付与するサービスを実施しています。
続いて、福岡都市圏の西部エリアと市中心部の天神を結ぶ路線を2014年11月に再編しました(http://www.nishitetsu.co.jp/release/2014/14_107.pdf)。
天神の西5kmにある「藤崎バスターミナル」(早良区)を乗り継ぎ拠点に設定して、西部郊外エリアから都心部に直通していた路線の6割を「藤崎バスターミナル」までに変更して、都心部へは「藤崎バスターミナル」で別のバスに乗り継ぐ方式に変更しました。
「藤崎バスターミナル」内には、バスの運行状況をリアルタイムで知らせる案内ビジョンを5台設置して、スムーズに乗り継げるように配慮しています。
また、乗り換えることへの抵抗感を減少させるため、交通系ICカード「nimoca」による乗り継ぎ割引サービスに加えて、「藤崎バスターミナル」で1回乗り換えるごとに「乗り継ぎポイント」を100ポイントを付与するサービスを実施しています。
こうした路線改編の結果、南部エリアと都心部を結ぶバスを1日あたり約150便、西部エリアと都心部を結ぶバスを1日あたり約110便、それぞれ減らすことに成功しました。
都心部へのバス流入数が減少したことで、渋滞緩和に貢献しただけでなく、多数のバスが入り乱れることで日常的に発生していた遅延もほとんど解消するという効果が表れています。
西鉄の倉富純男社長は、「バスを乗り継ぐことへの抵抗感は、当初思っていたより小さいようだ。交通体系を整備し、多くの人に動いてもらうことで、(商業・レジャー施設、ホテルなど)他の事業で利益を上げるのが西鉄のビジネス。将来的には東部にも乗り継ぎ拠点を作りたい」と、産経新聞の取材に応じています。
東部エリアの乗り継ぎ拠点の候補としては、西鉄の鉄道路線・貝塚線の駅がある「千早」「香椎」「貝塚」が有力候補です。これらの東部エリアからは、JR九州の在来線や市営地下鉄を利用しても都心方面に向かえるため、地域特有の事情に適応した最適な方法については研究中です。
市営地下鉄を運営する福岡市の倉富純男市長も、西鉄の路線バス改編を歓迎していて、西鉄と市営地下鉄が連携して共存共栄できる総合交通体系づくりに強い意欲を示しています。
西鉄の倉富社長も、電車・路線バス・地下鉄が連携することで公共交通ネットワーク全体の利用者を増やすため、福岡市との連携を深めていく意向を示しています。