関東EST創発セミナー「環境にやさしい公共交通のこれからを考える」が2014年11月14日(金)に開催され、宇都宮市の荒川副市長、みちのりホールディングスの松本社長などが発言しました。
詳しくはこちら→ 下野新聞 2014年11月15日報道
当日は、行政関係者や市民など約130人が参加して、コンパクトなまちづくりと公共交通の役割などについて講演や討論が行われました。
セミナー前半では、筑波大大学院の石田東生教授と富山市都市整備部の高森長仁次長が講演しました。
石田教授は、富山市の実例を紹介しながら、交通は未来へと向かって行く活力の源泉であるとしたうえで、既存の都市構造を活かしながらネットワーク型コンパクトシティへと移行していく必要性を説きました。
また、短期的・利己的にメリットがある行動を取れば、社会的・長期的なメリットが低下してしまうという「社会的ジレンマ問題」にも触れて、人々の気持ちや意識を変えていく継続的なモビリティマネジメントが重要だと説明しました。
高森次長は、鉄軌道と幹線バスを「軸」としてネットワーク型コンパクトシティ政策を進めている富山市の取り組みについて講演。
少子高齢化に伴う人口減少や環境負荷軽減などの観点からもコンパクトなまちづくりは必然で、LRT「富山ライトレール」導入や幹線バスの強化などで「正のスパイラル」が生まれて、まちや人に好影響をもたらしている実例を紹介しました。
富山市では、「富山ライトレール」(7.6km)、中心市街地の「セントラム」(軌道を0.9km新設して路面電車を環状線化)に続いて、高架化される富山駅の直下で南北LRTの接続(0.3km)、市内LRTから富山地方鉄道上滝線へのトラムトレイン(鉄道・軌道の直通運転)実施(10.1km)によって、総延長25.3kmのLRTネットワークを構築する計画です。
その後行われたパネルディスカッションでは、宇都宮市の荒川辰雄副市長が東西基幹交通として導入するLRT(軽量軌道交通)整備計画の概要や課題について説明。
荒川副市長は、行政の仕事は市民が求めるサービスを効率的に提供していくことで、高次な都市機能を交通で結び、マイカーがあってもなくても生活できる環境作りが重要との認識を示しました。
宇都宮市が目指しているネットワーク型コンパクトシティ政策は、公共サービスを提供する地域を拡散させず、現状ではまだまだ改善の余地がある公共交通サービスを充実させるという行政改革の一環であると説明。
新たな交通システムであるLRTの導入は、人と企業に選ばれる便利で魅力あるまちを作るという目的を実現するための、コンパクトで効率的なまちづくりには欠かせない手段である点を説明しました。
関東自動車(関東バス)を傘下に収める「みちのりホールディングス」の松本順社長は、経営破綻後に県や市からの支援を受けてノンステップバスの導入数を増やしたり、停留所の改善を進めている取り組みを説明。
2016年度にIC乗車券の導入やバスの運行本数を増やすなど、路線バスの利便性向上に意欲を示した上で、バスの運転手が不足していて、本数を増やせない実情にも言及。
LRTとの連携については「大変重要」と明言したうえで、拠点と拠点を結ぶLRTに加えて、LRTを面的にフォローする交通ネットワークが必要であるとして、LRTの停留所やトランジットセンターから離れた場所にある住宅地などへのフィーダー路線(支線)の充実をセットで進めるべきだと発言しました。
宇都宮市は、東西基幹交通として導入するLRTと連動して、バスネットワークを充実する方針であることを、これまでの市民説明会などでたびたび説明しています。
今回のセミナーにおけるみちのりホールディングス松本社長の発言も、市の方針と合致する内容でした。