宇都宮市の荒川副市長、LRTの速達性・輸送力向上の必要性と課題を説明

宇都宮市が芳賀町と共同で導入するLRTについて、同市の荒川辰夫副市長はインタビュー取材に応じ、需要増に対応して速達性と輸送力を高める必要性と課題について説明しました。
http://response.jp/article/2014/11/03/236493.html

このインタビュー記事は、2014年9月末に「レスポンス」が実施したインタビュー取材に基づく内容です。

荒川副市長は、LRT(軽量軌道交通)導入について、宇都宮市が将来の都市構造として「ネットワーク型コンパクトシティ」を目指していく中で、東西方向の公共交通の「軸」を形成する交通機関であると説明しています。
今年実施したLRT沿線企業の従業者アンケート調査から、東西方向の公共交通機関として路線バスやBRTではピーク時の需要に対応しきれないことが判明していて、バスやBRTより輸送力が高く、専用軌道で定時性を確保できるうえに、モノレールやAGT(自動案内軌条式旅客輸送システム)などと比較して建設費を大幅に抑制できる路面公共交通としてLRTは最適といえます。

宇都宮市が掲げる「ネットワーク型コンパクトシティ」は、地内各地域の拠点と都心部を公共交通で結んで、連携・集約型の都市構造を目指すという構想です。
市街地の拡散に伴う行政コストの増大を抑制し、市民の生活の質を保っていくための重要な施策となります。
市内の各地域間を結ぶ「軸」は、既存の鉄道路線と路線バスなどを想定していますが、これまで宇都宮市では中心市街地と産業拠点である市の東部を結ぶ「軸」が不十分な状況が続いていました。

従来、マイカー通勤からLRT通勤への転換率は3.6%と試算(2013年に実施した企業ヒアリングの結果から)していましたが、今年実施したLRT沿線企業の従業者アンケート調査結果、LRTについて「快速がなくても利用する」が10.5%、「快速があれば利用する」が8.6%、計19.1%の従業員がマイカーからLRTに乗り換えると回答して、予想より大幅に需要が高いことが判明しました。
この点について荒川副市長は、「便利」なマイカー通勤をしている人が約20%もLRTに転換するはずがない、というのが専門家を含め多くの人が抱く最初の感想だとしながら、実際に清原工業団地など訪れて、マイカー通勤だと35~45分(JR宇都宮駅から駐車場まで25~30分、駐車場から就業場所まで徒歩10~15分)かかる実態に触れた後、LRTだと天候や時間帯に左右されずJR宇都宮駅から20分台で到着できると説明すると、転換率が20%に迫る需要の高さを納得してもらえるとのこと。
この理由について副市長は、目的地の建物と駐車場が分離して配置されるような広大な街区構造になると、マイカーの利便性が大幅に損なわれるためで、一般の市街地より高い転換率になると解説しています。



事業費の大幅な見直し(260億円→412億円)について荒川副市長は、LRT沿線企業の従業者アンケート調査から、従来の予測を大幅に上回る需要が見込めると判明したこと、速達性が向上すると需要が大幅に増加するという結果が導き出されたことにより、需要増に伴う編成数・編成長の増強と速達性向上なども織り込んだものであることを説明。


速達性を高めてより多くの人に利用してもらうため、(1)快速の運行、(2)制限速度の緩和、(3)編成長の緩和の課題解決を図って行く方針です。

(1)快速列車の運行は、停車する停留所を減らして所要時間の短縮を図るものです。途中の停留所で普通列車を追い抜く必要があるため、途中で2ヶ所の停留所に追い越し線を設置することが課題になります。

(2)制限速度の緩和は、鬼怒川を渡る区間は専用軌道、工業団地内部は実質的には専用軌道となるため、これらの区間で「軌道法」で40km/hに制限されている速度の緩和を実現することが課題で、関係機関と調整する予定です。

(3)編成長の緩和は、快速の運行と速度規制の緩和が実現すると、大幅に需要が増大するため、調査結果から予測されるピーク時の需要に対応するには編成長が30m級のLRVだと2分半~3分間隔で運行する必要が生じ、編成数が増加して運転士も増やさなくなるため、輸送効率を向上させるためには40m級LRVを導入することも検討する必要があると指摘。
編成長が30mを超える場合、特別な認可を受ける必要があるため、編成長の増強が実現できるかも課題です。


荒川副市長は、LRTの検討内容が具体化するにつれて市民の理解も進み、いつどのように導入するのかという点に関心が移ってきていると認識しているとしながら、導入に慎重な意見をお持ちの場合は「具体的な疑問点を挙げていただければ、丁寧にご説明させていただきたいと思います」と話しています。